(『日本の新進作家展』東京都写真美術館 図録より)


『思い出すのは、あの日見た場所。だれかではなく、どこか』


綺麗。
素直に感動しながら、私は目の前の景色を切り取っていく。

旅に出る前は、いつも興奮してなかなか眠ることが出来ない。新しく出会う何かに不安と緊張を感じながらも、嬉しい気持ちが先にたつ。飛行機の中で浅い睡眠を繰り返し、ようやく辿り着いた目的の場所。

私は異国の地からやってきた旅人には違いないけれど、観光の記録は撮りたくない。
人の表情だけでは表す事のできない、その街の色や湿度を撮りたい。
人が居なくても感じられる、その街の気配や佇まいを撮りたい。

だから、その街で誰かと出会っても、躊躇う事なく過ぎ去ろう。

出会った誰かではない、辿り着く何処かの為に。

記憶に残るように。光と空気を味方につけながらシャッターを切り、
私は、わずかに滲みをともなった断片をつなげていく。


内藤さゆり